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October 17, 1999

懐かしい日本の歌、新しい歌

 僕の愛するコンサート。スペース桐里の音楽イベントが復活した。残念ながら、第1回は聞き逃したのだが、ようやく本日第2回に参加できたのでその興奮覚めやらぬうちに感想を記しておきたいと思う。今展開されているプログラムは「懐かしい日本の歌、新しい歌」と題した企画コンサートである。このシリーズは、スペース桐里のオーナーであり、声楽家であり、更に音楽会のプロデューサーでもある、竹前文美子さんの企画及びコーディネートで実現された素晴らしい音楽会。何しろ、三善晃さんの伴奏で氏の歌曲が聴けるのである。しかも、50人限定の極めて親密な音楽空間で、である。その喜びたるや推して知るべしというものだ。
 プログラムは昔懐かしい歌曲からスタートした。最初の二曲はよく母が下手なピアノを弾きながら歌っていたのを思い出す。僕には文部省唱歌というか、なんとも堅苦しいイメージしかない曲だったが、今日、三善晃氏の伴奏と三林氏の歌で聴くこれらの曲は、恐らくドイツリートを意識して作曲されたであろうこれらの曲の真の姿を垣間見させてくれたように思う。この二曲に「浜辺の歌」を加えた三曲は、会場に詰め掛けた50代以上の方々に、きっと暖かく届いていたことと思う。本当に、今日のコンサートは僕の母に聴かせてあげたかった。
 続いて演奏された「わらい」「一人は賑やか」は、三善晃氏の曲はもちろんだが、詞の素晴らしさが出色だったと思う。特に「わらい」だ。この詞を書いた金子みすずさんという方について僕はまったく知らないが、是非詩集を読んでみたいと思った。この詞を産み出す「眼差し」を僕も持ちたいと思う。参考までに「わらい」の詞を以下に記しておこう。

わらい(金子みすず)

それは きれいな ばらいろで
けしつぶよりか ちいさくて
こぼれて つちに おちた とき
ぱっと はなびが はじけるように
おおきな はなが ひらくのよ
もしも なみだが こぼれるように
こんな わらいが こぼれたら
どんなに どんなに きれいでしょう 

 曲の合間に三善晃氏が、ピアノ小曲を演奏した。「微風の踊り」と「おやすみ」の二曲。これが僕にはたまらないほど素敵だった。日本の作曲家のピアノ作品はどうしてあまり聴かれないのだろう。この二曲は、本当に素晴らしかった。僕がピアノ小曲に求めるのは、こうした凝縮感とリリカルな旋律。そして、素晴らしく繊細な弱音のアルペッジオなのだ。ご本人のピアノを前にして、こんなことを言うのは不躾だろうが、スクリアビンのリリシズム、ラヴェルの感受性、そしてモンポウの情熱、それらに共通するものを僕は感じていた。それに、ヤナーチェクのピアノ曲が持つ、何とも言えない身近な感じ。草の臭いをそのまま持ちこんだような小曲たち。今日聴いたような曲たちは大好きだ。早速、レコードを調べに行かなくちゃ。本当に素晴らしい演奏会だった。

●演奏曲目
 荒城の月:(土井晩翠 作詞 ・ 滝 廉太郎 作曲)
 からたちの花:(北原白秋 作詞 ・ 山田耕筰 作曲)
 浜辺の歌:(林 古径 作詞 ・ 成田為三 作曲)
 わらい:(金子みすず 作詞 ・ 中田喜直 作曲)
 よかった:(河野 進 作詞 ・ 川田耕平 作曲)
 一人は賑やか:(茨木のり子 作詞 ・ 三善晃 作曲)
 抒情小曲集より:(萩原朔太郎 作詞 ・三善晃 作曲)
  ほおずき
  少女よ
  雨の降る日(兄のうたへるうた)
  小曲
  五月
 アンコール(三善晃・G.Faure)
 
●演奏
 三林 輝夫(テノール)
 三善晃(ピアノ)

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