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May 19, 2005

ジャクリーヌ・デュ・プレ

dupre今までになく暑い日。
車で移動しながらJ-WAVEを聴いていたら、
ヴァイオリニストの千住真理子のお話が。
つい耳を傾けてしまう。
昨年からストラディバリウスを弾いている彼女。
素晴らしい楽器と出会ったせいか、
最近の千住真理子は音も演奏も素晴らしい。
その彼女が選んだ一曲目が、ジャクリーヌ・デュ・プレが弾く
エルガーのチェロ協奏曲ホ短調の1楽章冒頭部分
だった。
運転しながら、外の景色は東京でありながら、
時間がジャクリーヌ・デュ・プレ一色になっていく。
恐るべき個性を秘めた演奏。
でも僕は今もこの演奏が好きではない。
この音楽はあまりに痛々しく響き、聴くのが辛いのだ。
レコードもCDも持っている。でも僕はずっとそう思っていた。
指揮がジョン・バルビローリであるのも、
この演奏をより劇的なものにしているかも知れない。

千住真理子はデュ・プレのこの演奏を「血を吐くような演奏」と表現した。
そう。そうなのだ。まさにそうなのだ。
不治の病で身体の自由を失い、チェロを弾けなくなった天才。
デビュー後、わずか6年の演奏を残して夭逝したデュ・プレ。
その魂と身体のすべてが注がれているから、
血を吐くような演奏になったのだろう。
千住真理子は、端的な表現で僕の思いを言葉にした。
そして彼女は「そんな音を出したい」と言った。
音楽に生きる人の凄さ、恐ろしさ。それを一瞬垣間見たような気がした。

ジャクリーヌ・デュ・プレの生涯についてはアナンド・タッカー監督の
『本当のジャクリーヌ・デュ・プレ』という映画で知ることができる。
これもあまりに悲しく、そして衝撃的な作品でもある。
難病のジャクリーヌを見捨てる悪い男として、
ダニエル・バレンボイムが描かれている。
彼はどう受け取り、どう釈明したのだろうか。
天才チェリストの妻を病で失った天才ピアニスト、天才指揮者。
彼はジャクリーヌについて何か語っているのだろうか。

血を吐くように、チェロから音を紡ぎだしたジャクリーヌ。
その音を僕はまだ穏やかに聴くことができないでいる。

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